研究概要 |
当該年度では,開発した「成長過程モデル」を実際の体育授業の場で検証した。とりわけ,「各教師が目指す教師像の明確なイメージの有無が体育授業に対する反省的思考の程度に関係する」といった仮説を検証し,そのことが教師の成長を左右する可能性について検討した。具体的には,(1)初任教師6名を対象に,授業計画に関わった知識への介入が授業中のマネジメント行動量と運動従事量に及ぼす影響を検討した,(2)小学校高学年および低学年担任教師計12名を対象に,学習成果(態度得点と運動技能)の高い教師群とそうでない教師群とで教師のもつ「教師像」と体育授業における教師の「反省的思考」との関係がそれぞれどのように異なるのか比較・検討した,の計2つを試みた。 その結果,前者の研究からは,(I)初任教師であっても授業計画を綿密に立案すれば,授業中のマネジメント行動を大幅に削減でき,子どもの運動従事量を態度得点の高い教師のそれに近いものへと高めることが認められた。これより,体育授業の基礎的条件の担保が「授業計画」と密接に関係していたものと考えられた,(II)初任教師のほとんどが運動従事量は増加したが子どもの運動技能(パフォーマンス)までは向上しなかった。こうした中で,運動技能を向上させた初任教師は,授業計画時には現れてこなかった運動教材に関わる知識を有していたことがインタビュー調査より導出できた,の2つを導出した。 また,後者の研究からは,(I)学習成果(態度得点と運動技能)の高い教師群は全員が具体的な目指す教師像を有し,経験年数の高い教師ほど具体的な像が導出できたのに対して,そうでない教師群では,経験年数に関係なく,「子どもと一緒に遊べる教師」など抽象的な教師像を有するにとどまっていたこと,(II)具体的な教師像を有している教師ほど反省的思考からの振り返りが深い関係にあったこと,の2つを導出した。
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