研究概要 |
本研究は,明治期における小学校の社会系特設教科目(特設学科)の実践展開とその様態について,各地の学校・図書館に所蔵される実践史料および地方教育会雑誌等の関連記事をもとに調査・分析することで,その実践的史位置を明らかにすることを目的とするものである。 本年度は,研究の二年目として,昨年度までに調査・収集してきた史・資料について継続的な分析・検討を行うとともに,長野市立図書館,弘前市立図書館,東北大学附属図書館本館等において,実践史料および地方教育会雑誌の関連記事の閲覧・収集を行った。 以上のような調査研究を通して,長野県内における特設教科目(特設学科)である雑科の実践展開については,少なくとも明治20年代初頭にまで遡り実践の存在を確認することができ,特に,第一次小学校令期に一つのピークを迎えていることが明らかになってきた。具体的には,1887(明治20)年9月,『信濃教育会雑誌』誌上における群馬県師範学校附属小学校の「小学雑科の教授目.」の紹介を一つの契機として,1889(同22)年に入り,尋常科や温習科における実践構想が盛んに提案されていることが確認できる。その意味において,当時の地方教育会雑誌が,各地における実践を紹介,あるいは媒介するものとして,一つの重要な「情報回路」としての役割を果たしていたとも考えられることから,今後は他地域における実践事例を含めた調査研究を進める予定である。なお,本年度の研究成果については,その一部を研究論文として公表した。
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