本研究は,明治期における小学校の特設教科目の実践展開とその様態について,各地の学校・図書館に所蔵される実践史料および地方教育会雑誌などの関連記事をもとに調査・分析することで,その実践史的位置を明らかにすることを目的とするものである。 本年度は,研究の最終年度として,これまでに調査・収集してきた史・資料について継続的な分析・検討を行うとともに,本研究のとりまとめを行った。その結果,青森県内における特設教科目(特設学科)である雑科の実践展開については,次のような点が明らかになった。まず,中津軽郡和徳尋常小学校においては,1886(明治19)年9月,「工夫画学科」・「実物科」・「言語科」の3科目からなる雑科課程が設置され,その後も一定期間実践が展開しているほか,郡内の他校においても雑科の実践の存在が確認できる。また,1887(同20)年9月には,北津軽郡学事会において「日用近接ノ事柄即チ概目ハ衡ノ使用時計寒暖計ノ見方ヨリ衣服ノ取扱方郵便為替方電信ノ掛ケ方ノ心得貯金預ケ方紙ノ斬リ方障子ノ張リ方変事ノ注意方水撒ノ心得方暦ノ見方等細密ノ事柄」を授ける雑科の実践構想について審議・討論がなされ,それが実際に北津軽郡五所川原尋常小学校における実践として結実している。そして,同校ではその後も雑科が独自な実践展開を見せていることが明らかになってきた。 このように,本研究を通して,群馬県・長野県内とともに青森県内においても,第一次小学校令期を中心に雑科の継続的な実践展開が確認できることから,今後は他地域における実践事例とともに,その後の各県における実践展開に関する調査研究がさらに重要な課題として浮かび上がってきた。なお,以上のような調査研究と更なる史・資料の分析をふまえた研究成果については,出来るだけ早期に公表する予定である。
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