研究課題/領域番号 |
22730684
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐野 史 群馬大学, 教育学部, 准教授 (30313018)
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キーワード | 中学校理科 / 体細胞分裂 / 教材開発 / 同調 / 培養細胞 |
研究概要 |
中学校理科で行われる体細胞分裂観察実験をより確実なものにすることを目的として、2つのアプローチから研究を行っている。一つ目は細胞周期の同調を取り入れて分裂細胞の割合の高い試料を調製するアプローチである。昨年度は同調が確実でなく、実践に耐えうる系が作れなかったが、材料をニンニクの鱗茎に変え、薬剤を除去する際に根を流水に当てて強く洗浄することにより、分裂細胞の割合の高い試料をほぼ確実に得られるようになった。そこで、この試料を用いて大学の学生実験において授業実践を行ったところ、無処理の根に比べて分裂細胞を見つけやすくなる効果が見られた。 二つ目のアプローチであるタバコBY-2細胞の教材化については、今年度はまず細胞骨格の一つである微小管を明視野で観察するための染色方法の確立を図った。金粒子標識の二次抗体の濃度や銀増感の処理時間を検討した結果、多くの細胞で微小管を観察することができるようになったため、得られた染色像を染色体の明視野像などとともに画像教材として利用可能な状態にした。しかしこの方法では、植物細胞の分裂間期に特徴的な表層微小管は良好に観察できたものの分裂期に特徴的な微小管構造は観察しにくかったため、別途検討が必要であることもわかった。また、今年度は細胞自体の教材化方法についても検討を行った。学校現場では振とう培養が困難であるため、代替方法としてスターラーによる培養の可能性を検討したところ、通常の回転子では細胞が潰れてしまったが、トライアングル型の回転子を用いれば少なくとも3日間は培養が可能であった。最適回転数についてはまだ検討が必要であるが、大学で無菌的に継代を行い、回転子を入れてスターラーごと学校現場に持ち込む下地ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同調試料の教材化については、材料と薬剤解除方法の改善により不確実性が回避できたため、当初の計画通り平成24年度には中学校における実践を行い、最終的な効果の確認を行う予定である。タバコBY-2細胞の教材化については画像取得を継続的に行っており、また細胞自体の教材化も基本的に可能であることがわかったため、いずれも改善を目指す状態である。
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今後の研究の推進方策 |
いずれの教材についても確立までは引き続き申請者本人がほぼ一人で大学において行う。授業実践や教材の有用性については学校に協力を仰ぐ。同調試料の中学校における実践については、群馬大学附属中学校の教員と既に授業日程など具体的な協議を行っている。分裂の時間軸を理解させる教材としての同調試料の活用と微小管を染色した試料の活用に関しては高等学校での学習内容となるため、卒業生である高校教員に授業への導入を打診している。また、タバコBY-2細胞自体の教材化に関しては、提案用の資料を作成した上で中・高教員に導入の検討を依頼する予定である。
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