中学校理科で行われる体細胞分裂観察実験をより確実なものにすることを目的として、2つのアプローチから研究を行った。一つ目は細胞周期の同調を取り入れて分裂細胞の割合の高い試料を調製するアプローチである。昨年度、同調した試料のほうが同調していない試料よりも分裂細胞が見つけやすいことが大学の学生実験で確認できたため、今年度は中学校2校において授業実践を行い、アンケート調査により同調試料の優位性の確認を行った。その結果、1校では同調試料の優位性が認められたが、1校では非同調試料の方が見つけやすかったという回答のほうが多く、同調の効果が認められなかった。後者の学校では同調・非同調を問わず分裂細胞を見つけられなかった生徒が多かったことから、顕微鏡の操作など、試料の状態以前の生徒の実態に結果が左右された可能性がある。一方、実践には至らなかったが、同調処理してから経時的に試料を調製することにより、分裂の進行を実感させる教材の開発を行った。 二つ目のアプローチであるタバコBY-2細胞の教材化については、スターラーを用いた、学校現場で可能な培養法の検討を引き続き行った。スターラーの形状や回転速度の検討の結果、培養3日目まで振とう培養機に匹敵する増殖を得ることができた。一方、BY-2細胞の特徴として細胞が大きく観察しやすいことが挙げられるため、細胞骨格の観察教材としての活用を試みてきたが、表層微小管は良好に観察できるようになったものの、紡錘体や隔膜形成体など分裂に関わる構造の染色は改善されなかった。表層微小管を染色した試料を高校教員や大学の学部生に観察してもらったところ、細胞骨格の存在を実感できたという感想が得られた。これら培養法や染色方法を含めたBY-2細胞のプロトコル集は、現在書き換え中のHPで公開する。
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