研究概要 |
これまでの社会科教育では,人権教育を中心にすえた教材開発やカリキュラム研究が十分なされてこなかった。また,これまでの日本の人権教育は,法的視点が弱いことが指摘されている。そこで,本研究では,法的視点を取り入れた判決書教材を活用し,人権教育カリキュラムの開発を実証的・臨床的に研究することをねらいとした。 本年度は,将来社会科の教員になることをめざす愛知教育大学の学部4年生を対象に,社会科教育CIV(中学・高校1種免許必修,公民分野)の授業において,「判決書教材を活用した人権教育」をテーマに,教材研究,授業事例検討,指導案の作成,模擬授業の発表を実施し,「判決書教材を活用した人権教育-学習指導案集-」としてまとめた。さらに本授業では,愛知県弁護士会の法教育委員会に所属する弁護士7名と連携し,判決書教材を活用した授業づくりや模擬授業の発表に弁護士が参加し,法的視点を取り入れた人権教育の授業づくりに協働して取り組んだ。 この授業実践を検証し,2010年11月13日(土),日本社会科教育学会全国研究大会において,「弁護士との連携による判決書教材を活用した授業づくり-教員養成大学における授業実践を中心に-」と題し,学会発表を行った。法学部ではなく,教育学部の学主に,判決書を活用して人権教育を行うことの難しさをどう克服しているのか,7人もの弁護士とどのように連携して授業づくりを行ったのかという点に質問が集まった。 今後は,大学の社会科教育に人権教育をどのように位置づけ,カリキュラムを充実させていくのかという点を研究し,2011年度も引き続き,弁護士と連携して授業づくりを行い,法的視点を取り入れた人権教育の在り方について研究を深めていくこととする。
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