研究概要 |
研究の2年目となる平成23年度は,大学の社会科教育の授業に人権教育をどのように位置づけて,カリキュラムを充実させていくかという点に研究の焦点を当てて取り組んだ。平成22年度に引き続き,弁護士と連携して判決書教材を活用した社会科授業づくりを行い,法的視点を取り入れた人権教育の在り方について研究を深めた。 具体的には大学の学部4年生を対象に「判決書教材を活用した人権教育」をテーマに,教材研究,授業事例検討,指導案作成,模擬授業を実施した。また,より効果的な弁護士との連携について探るため,愛知県弁護士会の庄司俊哉弁護士と協働で授業づくりを行った。学生の模擬授業における判決書の選定と教材化については,「ハンセン病」をテーマにとりあげ,様々な角度から授業実践の検討を重ね,将来社会科の教員として学校現場で実践できる力量形成を検証した。さらに,教員研修の場においても判決書教材を活用した人権教育を行い,教員養成の学生のみならず,現職教員を対象に行った研修においても判決書教材を活用した人権教育の有効性を確認できた。 23年度の研究のまとめとして,「判決書教材を活用した社会科人権教育-教員としての人権意識を高める実践-」と題し,教育実践論研究会で発表を行った。研究会では,判決書教材を活用した授業実践について長年研究されている梅野正信教授から,社会科教師としての人権意識を高めるために欠くことのできない人権課題を精選した授業実践を追究する必要性があるという助言を受けた。今後は,特に重要な人権課題として,女性,子ども,障がいのある人,外国人,ハンセン病患者の5つに焦点を当て,授業実践を通じて人権教育のカリキュラム開発に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として,次の5点に重点を置き,研究を推進させる。 (1)「人権教育・啓発に関する基本計画」で示された人権課題に関連した判決書を精選する。 (2)(1)で精選した判決書の教材化を図る。 (3)(2)で教材化した判決書を活用し,単元構想と指導案を作成する。 (4)(3)で作成した単元構想と指導案に解説や資料を加え,判決書教材を活用した人権教育のテキストブックを作る。 (5)(4)で作成したテキストブックを研修会や研究会等で検討し,改善を図る。
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