研究の最終年度では,これまでの研究成果をもとに,「模擬授業を組み入れた社会科教育指導法改善の方法と課題」と題して,全国社会科教育学会において自由研究発表を行った。 2009年度から2013年度にかけて,大学4年生の社会科教育指導法(公民的分野)において,模擬授業を最終課題に組み入れた授業構成と社会的課題を組み入れた内容構成を試みてきた。学生自身の問題意識を尊重し,学生相互の協力・参加・体験を重視することで,社会的課題に迫る授業の在り方を模索した。 社会科教育指導法の授業では,現代日本における社会的課題,とりわけ,教師を目指す学生に正確な知識と共感的姿勢が期待される,いじめ問題,障害のある幼児の保育園入園問題,ハンセン病問題について事例検討を行った。授業づくりでは,ストーカー,いじめ,外国人,アイヌの人々,インターネットの名誉毀損などからグループで話し合ってテーマを選択し,模擬授業に取り組ませた。模擬授業の後,講義最終段階では,事例検討と授業づくりにおける社会的課題の関連性,授業づくりにおける工夫,困難,学び,やりがい,資料活用,模擬授業発表の成果と課題,工夫と学び,おもしろさ等についてアンケート調査を行った。判決書教材を活用した一連の授業づくりを通じて,将来社会科の教員になる学生にとって,学びを深めるのに有効であったことが確認できた。 また,判決書教材を活用した人権教育のテキストブックとして,『A Casebook for Social Studies Teachers 社会科教師のための判例資料集』を作成し,これまでの成果をまとめた。
|