研究概要 |
本年度は、(1)日英シティズンシップ教育における教育実践(教育内容と教育方法)の固有性を、教育思想並びに文化的基盤から明らかにすること、(2)シティズンシップ意識調査(学生並びに教員対象)とその研究方法論の分析と開発、という2点を主に進め、以下2点を明らかにした。 第1は、本研究の分析フレームワーク(「文化心理学の研究成果を市民性意識調査研究へ応用し、調査研究を基盤に帰納的に授業構成の違いを分析する」)に基づき、法関連教育を事例に日英の教科書分析を行い、両国における教育実践の固有性を教材構成と学習環境の2点から明らかにした。その結果、日本の法関連教育が規範意識の上に態度があり、そこから社会的行動力を備えるという階層構造を採用していることを明らかにした。すなわち、社会的行動力は基本的生活習慣や規範意識といった、知識としての道徳的な素養を基盤としており、実践的な活動をベースに考える英国におけるシティズンシップ教育とその論理が大きく異なることを以下の論文で明らかにした。 Noboru Tanaka,The relations of citizenship and the educational practice in Japan-in the educational practice of"law related education"-,"Lifelong Learning and Active Citizenship",Children's Identity and Citizenship in Europe,pp.2011(印刷中). 第2に、シティズンシップ教育実践とその授業構成論の違いを市民性意識の関係から帰納的に分析する研究方法論を明らかにした。その結果、諸外国で実施しているシティズンシップ教育に関わるカリキュラムや教材、授業分析から演繹的な方法で学習原理やその実効性という方法論ではなく、子どもの持つ市民性意識が教師による教育実践とどの程度接近しているかに焦点を当て、帰納的にシティズンシップ教育実践の違いとその論理を解明する研究方法論を開発し、具体的な調査結果とともに以下の論文に掲載した。 田中伸「シティズンシップ教育実践の多様性とその原理-学習環境を基底する市民性意識の解明を通して-」『教育方法学研究』日本教育方法学会、第36巻、2011(印刷中)。
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