研究概要 |
本年度は、(1)シティズンシップ教育の固有性を授業開発と実践を通して解明すること、(2)シティズンシップ教育における固有性の基盤である日英の市民性教育研究方法論的特質を分析、その課題の解明を行うという2点を主に進め、以下2点を明らかにした。 第1は、シティズンシップ教育の固有性として、目英において社会事象に対する価値判断基準が異なることを明らかにし、日本の子ども達の価値判断基準を分析するための授業を開発、それを実践した。具体的には、「インスタント商品」の使い分けを事例としたパイロット研究を大阪市内の小学校にて実践した。その結果、理解型ではなく探究学習の形を取る事で、価値判断基準の明確化、並びに相対化が可能であることを解明し、以下の論文にそれを示した。 Noboru Tanaka, The Structure of Learning Environments in Elementary Social Studies Education Aimedat Methodology of Inquiry Educational Practice for Citizenship through Analysis of Media Used, The Journal of Social Studies Education, The International Social Studies Association, pp. 1-10, 2012. 第2に、シティズンシップ教育の固有性の前提として、市民性教育研究方法論の違いが存在することを解明し、英国を事例に典型的な教育研究の論理を解明した。その結果、英国の市民性教育研究方法論が大きく(1)記述的アプローチ、(2)因果的推論アプローチ、(3)経験的推論アプローチという、大きく3つの方法論に分類することが出来ることを示し、各々の特質と課題を解明した。その結果を以下の論文に示した。田中伸「英国市民性教育研究の方法論的特質-3つのアプローチにみられる研究目的・内容・方法の特質と課題-」『社会科教育論叢』全国社会科教育学会、第48集、2012、pp.87-96。また、上記研究成果を通じて、過日から実施している市民性意識調査の質問に課題があることが分かり、質問内容の再検討を行った.その検討結果を踏まえて、意識調査の質問紙と調査方法の再構築を行った。
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