多元的な見方・考え方を育成する小・中・高一貫歴史カリキュラムの開発に向けて,以下の研究活動を行った。 1.アメリカ社会科における小・中・高の歴史教育の分析。本年度は,NCSS(全米社会科協議会)の社会科カリキュラム・スタンダード(改訂版,2010年)を分析し,小・中・高の歴史教育を通じて多元的な見方・考え方をどのように育成するのかについて考察した。特に,NCSSが掲げる社会科の10のテーマのうち,歴史教育の中軸となる「時間,連続性,変化」に着目した。スタンダードの分析を通して,多様な視点や立場から捉えた「複合的な解釈」や,異なる「複数の解釈」を,学年段階の上昇に応じて形成・評価させるための方法論について考察した。 2.小・中・高の歴史教育の分析を踏まえた授業開発。カリキュラム開発をめざして,授業レベルからの開発を進めた。大学院生の協力のもと,NCSSの社会科カリキュラム・スタンダードの分析を踏まえて,日本の教育内容を用いた小・中・高の歴史授業を2セット開発した。一つは「開国」を題材とするもの,もう一つは「五・一五事件と政治の変化」を題材とするものである。それぞれについて,小・中・高の授業モデルを示し,学会にて発表することができた。また,学校の教員にも検討していただき,意見をいただくことができた。 今後も継続的に本研究の成果を吟味し発展させていく必要があると考えている。
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