平成22年度は、協同的学習場面における言語を中心とした相互作用を分析することによって、自分自身の考えを深化、修正することにつながるトリガーや、そのメカニズムを質的に明らかにすることなど、基礎的データの収集を目的とした。そして、得られた知見より、他者との相互作用によって思考が深まるような状況を生じやすくさせるための指導方法について検討することを目指した。 調査結果の概要を中心に、(1)小学校理科において実験方法を考える場面を対象として行った調査、(2)中学校理科における生徒の認知的共感性と認知操作的発話の関連を検討した調査、の2点に整理して述べる。 (1)小学校理科で実験方法を考える場面において、児童の発話を収集、プロトコル化し、実験方法の検討過程における相互作用の特徴を検討した。その結果、「単に自分の考えを表象する発話」が多く、「自己や他者の考えを認知的に変換させる認知操作的な発話」が少ないことが明らかとなった。 (2)「相手の視点・立場に立って、相手の考えや気持ちを理解しようとする」認知的共感性に着目し、中学校理科の話し合い場面を対象に、小グループにおける学習者の認知的共感性と認知操作的発話との関係を検討した。 その結果、理科の話し合い場面において、グループに認知操作的な発話が表出する場面では、認知的共感性の高い生徒が他者の考えに対して「正当化の要請」や、「矛盾点の指摘」などの発話をおこなうことが明らかとなった。
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