研究課題/領域番号 |
22730694
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松浦 拓也 広島大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (40379863)
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キーワード | 協同的学習 / 科学的な思考力 / 言語活動 / 相互作用 / 中学校理科 |
研究概要 |
平成23年度は、これまでの研究成果を基盤にしながら、自然現象を科学的に考え、整理する場面において、児童・生徒が「書く」ことを通して自立的・主体的に思考するために必要な指導方法を考案することを最終的な目標とした。また、その前段階として、(1)理科の授業における協同的な学習を通して、子どもが科学的概念を獲得していく過程の分析、(2)科学に対する態度の違いが概念獲得に及ぼす影響についての統計的分析、の2点を行うことを通して、指導法への示唆を導出することとした。その結果、 (1)理科の授業における協同的な学習場面を対象に調査を行い、ワークシート分析から科学概念の獲得状況を、話し合い場面の発話記録から科学概念の獲得過程をそれぞれ分析した。その結果、科学概念が獲得できている生徒の特徴として、他者からの「正当化の要請」や「フィードバックの要請」などによって、「精緻化」や「統合」が生じ、自身の考えを明確にできていることが明らかになった。一方、科学概念が獲得できていない生徒の特徴としては、単に他者の話を聞くのみで、生徒同士の相互作用が認められなかった。 (2)PISA2006のデータを用い、「科学的リテラシー得点」と「生徒の科学に対する態度」の関連を構造的に分析する際に、潜在構造分析を取り入れることにより、潜在的な母集団を探索することを目的とした。潜在クラス数を2として推定を行った結果、主に「科学に対する将来指向的な動機づけ」と「理科学習に対する道具的動機づけ」の「科学的リテラシー得点」に対する効果が異なる2つの母集団を抽出することができた。 これらのことから、科学に対する態度によって科学的概念やリテラシーへの影響要因が異なることを加味しながら、話し合い場面において「精緻化」や「統合」が生じやすい学習環境を整える必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成22年度より継続的に、児童・生徒を対象に理科の協同的学習場面における発話及び記述に関するデータを収集していたが、概念獲得に関する視点の調査を追加しその分析を行ったことにより、指導法の開発が完了していないため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた知見に基づき、他者との相互作用によって思考が深まるような状況を生じやすくさせるための指導方法を具体化し、実践的見地からその有効性や改善点について検証を進める。
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