平成24年度は、自然現象を科学的に考え整理する場面において、児童・生徒の科学的な思考力を育成する、言語力と協同的学習を基盤とした教授-学習プログラムの開発を完了することを目標とした。また、その前段階として、(1)文化的発達の視点による学習者の科学概念構築過程の分析、(2)科学に対する態度の違いが概念獲得に及ぼす影響について、その構造及び特徴を諸外国との比較に基づいて分析、の2点を行うことを通して指導法への示唆を導出することとした。その結果、 (1)中学校理科における小グループでの話し合いにおいて、文化的発達としての科学概念の獲得が高次の段階に到達したグループでは、他者との相互作用の中で科学概念と補助的道具の素朴な結びつきが破綻し、科学概念と補助的道具の正しい対応関係が形成されていた。そして、形成された正しい対応関係を他者に説明することで、両者の結びつきが精緻化されていくことが明らかとなった。 (2)PISA2006のデータを用い、「科学的リテラシー得点」と「生徒の科学に対する態度」の関連を構造的に分析する際に、カナダ、香港、日本、韓国、台湾、アメリカの6カ国で多母集団同時分析による比較を実施した結果、日本を含む東アジアでは「科学的リテラシー得点」に対して「科学の楽しさ」や「科学に関する全般的興味・関心」の影響が大きく、北米では「科学に関する個人的価値」の影響が大きいことが明らかとなった。 以上の研究成果、及び前年度までの研究成果を統合し、科学的な思考力を育成する、言語力と協同的学習を基盤とした教授-学習プログラムの基盤を構築した。
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