本研究は、農業高校の地域連携教育の中で、特別支援学校との連携について着目し、そこでの教育的効果や手法など体系的に調査研究することを目的としている。また、近年では農業高校の広大な土地を活用し、特別支援学校などが併設される傾向が多くなっており、「農業」分野における「福祉」的視点からのアプローチが始まりつつある。 具体的には、農業高校内に併設されている特別支援学校の分校との「交流授業」と「共同授業」による取り組みに焦点をあて、そこでの継続的な授業分析を行った。従来、教師から農業高校生へ伝えられる教師主体による「知識・理解」の学びに留まらず、農業高校生が、分校生に「技能・表現」を伝える事が、生徒自身に「伝える力」といった学びの成長保障といった新たな学力形成になりうることが明らかとなった。 一方で、農業科の学習指導要領では新分野として「ヒューマンサービス領域」の科目が新設され、既にヒューマンサービス系の科目として「生物活用」と「グリーンライフ」が実施されている。今回分析した、「交流授業」と「共同授業」は、「生物活用」の学習方法である「交流活動」や「療法的手法」の一つとしての貴重な実践事例として見る事が出来た。 本研究では、農業の特性を活かした障害者教育の可能性を探ることは、現在農業高校が行っている教科「生物活用」「グリーンライフ」においても新たな知見を示しうるものであるが明らかとなった。昨今の農業高校が進めている福祉的視点の意義と課題を示す点でも本研究が果たす役割は大きいと言える。
|