研究概要 |
本研究課題は小・中学校に在籍する学習障害児等の特別な教育的支援を必要とする児童生徒のためのキャリア教育プログラムを開発することを目的とした実践研究である。平成22年度は,研究初年度であるため文献収集および教育現場での授業観察を中心に行い,特別支援教育におけるキャリア教育実践の現状と課題の分析を子なった。中でも,学習障害児等の特別な教育的支援を必要とする児童生徒のキャリア教育では,通常の学級における学力向上の基盤であり,情緒の安定や自己肯定感を高める教育プログラムの開発が重要であることが明らかになった。特に,思春期・青年期のみならず,幼児期から体系的にキャリア形成に努めることの重要性が明確になり、その成果の一部を書籍に発表した。また,インクルーシブ教育を提唱した英国の通常の学級に在籍する特別な教育的ニーズのある児童生徒に対するキャリア教育の方法を調査・研究した。平成22年度は特に,英国を訪問し,通常の学級に在籍する特別な教育的ニーズのある児童生徒に対して用いられているキャリア教育と学力向上の取り組みである「効果的学習(effective learning)」や「人格・社会性・健康・教育(PSHE)」との関連性について検討した。英国では,子どもの自己意識や自己肯定感,自己理解を促進し,社会的・情緒的発達の基盤を形成するPSHEの実践が開発されており,こうしたプログラムは学習困難児が通常の学級で教育を受け、社会に出てから活躍することができる人材を育成する上で重要であると指摘されており、キャリア教育と学力向上および生徒指導の実践との関連性が示唆された。次年度はこうした研究成果をもとに、キャリア教育において重要と考えられている自己肯定感の高め方や感情コントロール力の育成方法について検討したいと考える。
|