研究概要 |
本研究課題は発達障害児のキャリア教育に関して,(1)人間関係の形成に必要な情緒的基盤を整え,ソーシャル・スキルを獲得し,(2)自らの職業適性を自己認識できるように,発達障害児の職場に適応できるキャリア教育プログラムを開発することを目的として進められている。2011年度には,発達障害児の人間関係の形成の困難をふまえ,キャリア形成につながるための授業づくりの方法について検討した。その結果,発達障害児の感情のコントロール力を育てるためには,褒めたり,自信を持たせるという活動が大切であるが,それを実現するために,「実感を伴う社会的活動」が重要であることが示唆された。2011年度はこうした視点をふまえて,茨城大学教育学部附属特別支援学校と連携・協同して授業開発を進め,.実践事例を集めた。そうした事例を分析する中で,発達障害児に対する授業づくりがキャリア形成と結びつくためには,教師の状況づくりが重要であり,そうした状況の中で発達障害児が試行錯誤し,考え,自ら判断するというように,価値を伴った活動の中でキャリアが形成されていく過程があることが明らかになった。2011年度にこうした研究成果の一部を『発達障害児の感情コントロール力を育てる授業づくりとキャリア教育』(新井英靖・三村和子・茨城大学教育学部附属特別支援学校編著・黎明書房)の中に収録し,広く成果を公表した。次年度は,こうした授業づくりとキャリア教育を実践する教師の資質や専門性に焦点を当てて,キャリア教育の実践開発と教師養成との関係について検討したいと考える。
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