平成22年度は、手話語彙力評価法を作成するにあたっての基礎的資料を得るために、聴覚障害児の手話語彙発達過程を明らかにすることから始めた。聴覚障害児の語彙獲得過程を把握するための方法として様々な方法を検討した上で、本研究ではチェックリスト形式で調査することとした。まず、チェックリスト調査に必要な語彙を選定する必要があるため、幼児児童が学校生活を送る上で必要な語彙を収集することを考えた。その際、アメリカ手話版マッカーサー乳幼児言語発達質問紙は、幼児児童が必要な手話語彙537語から構成されており、それをもとに日本手話でも表現可能であるものを選択した。またアメリカ手話版マッカーサー乳幼児言語発達質問紙に含まれていない語彙でも、日本の聴覚障害児が学校生活を送る上で必要な語彙も加え、約500の語彙からなる日本手話の語彙チェックリストを作成した。 このチェックリストは、聴覚障害幼児児童の保護者を対象に用いられ、各語彙について、理解と表出の両方について調査を行うために作られた。理解に関しては、各手話語彙について、(1)まだ理解できない、(2)おそらく理解している、(3)確実に理解している、の3段階で理解度を調査した。表出についても同様に、各語彙について、(1)自ら表出することはない、(2)使用するが意味的誤用や音韻的誤用がある、(3)正しく使用している、の3段階で調査を行った。本年度は、チェックリストを作成し、聴覚障害児の保護者数名に対して、チェックリストによる語彙調査を実施し、その妥当性や問題点について検討を行った。ここで得られた知見をふまえ、平成23年度に人数を増やした調査を行う予定である。
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