これまでの研究成果より、各手話語彙の難易度と写像性の程度について数量的に算出でき、これにより実際に手話語彙評価法を開発する上で必要な手話語彙リスト作成の基礎資料を得た。次に課題になるのは、実際に手話語彙評価を作成する際、どのような形式のテストにするのかということである。手話語彙の理解力を見るのか表出力を見るのか、選択肢を与えてその中から適したものを選ばせる「再認」の形を取るのか、選択肢を与えず被験者に自由に回答させる「再生」の形を取るのかが問題になる。この2×2の4つの組み合わせで10の語彙についてだけテストを試作した。その結果、最も難易度が高いのは「理解-再生」型であり、ついで「表出-再生」型、「表出-再認」型、「理解-再認」型であった。 「理解-再生」型のテストとは、手話語彙を与え、その語彙に関係する手話語彙を3つ挙げることを被験者に求め、挙げられた語彙のタイプで評価を行うというものである。「表出-再生」型とは、絵を見せてその絵を表す手話語彙を被験者が表出し、評価を行う。「表出-再認」型とは、絵を見せた後、手話単語を表現した動画を4つ見せ、絵にあった手話語彙を4つの選択肢選ぶというものである。「理解-再認」型とは、手話語彙を見せ、その意味に最も近い絵を選択肢の中から選ばせるというものである。 この4つのテストのうちの1つを選ぶのではなく、最も難易度の高いテストを最初に行い、回答に誤りがあった場合、より容易な形式のテストで行い、さらに誤答があった場合、より容易な形式のテストを行うという階層的な形が理想的な手話語彙評価テストになると考えられた。これにより、手話語彙を「知っている」か「知らない」かという単純な二分法ではなく、その語彙をどのくらいの深さで理解し、使用しているかまで評価できると考えられた。
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