研究概要 |
本研究では,反応の乏しい重度脳障害事例を対象に,生理指標を活用した感覚・認知機能評価にもとづいて,獲得機能と療育環箋との関連性についての検討,および療育環境の効果に関する実践的検討を行い,これらの検討を通して,発達ニーズに対応しうる療育環鏡の構築を行うためのプログラムを策定することを目的とした.本年度(二年度)は,昨年度の成果に基き以下の点を明らかにした.(1)重障児事例3例(事例A,B,C)を対象に,療育内容の違いが及ぼす効果についての実践的検討を行った.それぞれの事例の各感覚系の応答性に基き授業での実践を行った結果,事例A,Bについては明らかな覚醒水準の上昇が認められ,うち事例Aは昨年度未熟だった体性感覚の能動性が高まった(事例Bは7月より体調不良で転院したため後半の機能評価ができなかった).事例Cについては能動性の水準と授業における覚醒水準,心的活動水準が必ずしも一致しなかったが,授業開始前および終了直後のこれらの水準はいずれも高かった.事例Cは療育場面をリラックス状況として位置づけていると思われ,療育場面を軸とした前後の日常場面における働きかけが重要と思われた.(2)(1)と並行して,昨年度実施した療育環境評価について,日常生活に関するより詳細な資料を得るため,学齢期重障児2例および成人重障者5例を対象に,ベッドサイドにおける刺激環境についての検討を行った.生理測定およびVTR分析に基いて評価を行った結果,「呼名」「本人への話しかけ」「顔を近づける」「触れる」等の本人への直接的なかかわりが多いほど覚醒水準が高くなることが明らかとなった.また事例によっては,本人以外との会話の声が多い場面でも覚醒水準が上昇し,周囲の刺激を能動的に受容しようとしていると思われた.(1)(2)より,事例の刺激受容の特徴を療育活動場面とベッドサイド場面の双方から把握し,これに基いた療育環境を設定することが重要といえる.
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