研究概要 |
これまで,聴覚障害児における意味の理解や使用については,おもに単独の名詞や動詞に焦点をあてて検討がなされてきたが,両品詞の共起関係について系統的な検討を行った研究はない。本研究課題では,特別支援学校(学級)に在籍する聴覚障害児を対象として,名詞と動詞の共起関係の理解について検討することを目的としている。研究実施期間を平成22年度~24年度とし,平成22年度は次年度の本調査にむけた予備調査期間として位置づけている。 予備調査における課題文の作成にあたって,教育基本語彙(国立国語研究所,2009)から,小中学校段階で習得されるべき名詞群と動詞群を抽出した。とくに動詞については,意味カテゴリー(生活動作, 感覚・感情,自然現象,対人関係,移動,状態など)を設定し,分類を行った。抽出した品詞群をもとに,特定の名詞と共起されやすい動詞を選択する課題文,ならびに特定の動詞と共起されやすい名詞を選択する課題文を作成した(例(1):魚を...【壊す・煮る・汚す・倒す】,例(2):【机・学校・花・答え】...が枯れる)。次に,健聴な大学(院)生50名を対象とし,各課題文に対する回答を求めた。彼らを予備調査の対象とした理由は,名詞と動詞の共起関係に対する理解能力が,充分に成熟していると考えられたためである。現在は,各課題文に対する回答を集計・分析している。集計・分析結果より,95%以上の回答一致率が得られた課題文を抽出し,次年度の本調査で用いる予定である。
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