研究概要 |
発達のごく早期段階に,口唇裂口蓋裂児がどのような心理社会的発達をたどり,発達にどのような特異性があるのか,またこの特異性によって母子の心的状態や関係性がどのような影響をうけ,それが患児の発達にどのような影響を及ぼしているか,について明らかにするため、出生から1歳までの期間における口唇裂口蓋裂児や母親の心理的特性,児と養育者との関係性,家族環境,養育者・家族のCL/CP経験の意味づけといった多元的な指標を用いた縦断的調査を実施した。研究協力者は,治療のために来院した児母子・家族(口蓋裂群・口唇裂群・口唇口蓋裂群)であった。調査に当たっては病院外来で主治医から本研究の説明を行ない,書面で同意を確認したうえで調査を実施した。調査は自由遊び場面の観察、母親に対する質問紙調査(患児の気質,育児ストレス,母親の抑うつ傾向,母親が家族内外から得られる情緒的なソーシャルサポート)、母親およびその他の家族への面接調査である。調査は、乳児が1-3ヶ月齢、5-7ヶ月齢、11-13ヶ月齢の3時点で行われ、2010年度には15組の母子が研究協力者となった。今年度の結果は、「口唇裂初回手術前における母親の子ども表象:生後1-3ヶ月の母親の語りから」として2011年3月に行われた日本発達心理学会で発表された。また2011年5月に新潟で行われる口蓋裂学会、および2011年8月にノルウェイで行われるヨーロッパ発達心理学会では、生後3ヶ月に行われる口唇裂初回手術前後の母親の心理的苦痛に着目して発表を行う。なお,患児の母親およびその他の家族には、心理的苦痛や養育上の疑問、不安など様々な相談・支援等を必要とする可能性が考えられる。このため,各面接では,必要に応じた情報提供を行う等の心理臨床的配慮を行うとともに、病院内外の心理的ケアを行う相談窓口への紹介も行っている。
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