昨年度と同様に、治療のために来院したCL/CP児とその母親と家族に対して病院外来・キッズルームにて調査を行った。口唇裂初回手術前後(Time1 生後3ヶ月頃、Time2 生後6ヶ月頃)、口蓋裂初回手術前後(Time3 生後12ヶ月頃、Time4 生後18ヶ月頃)で予定する1歳半まで調査を実施できた事例は49例(口唇口蓋裂児母子22組、口唇裂児母子13組、口蓋裂児母子12組)であった。承諾が得られなかったり、多忙等の理由で、途中脱落した辞退事例は40例であった。辞退事例の多さは、長期縦断研究においては往々にして生じるものの、方法の再検討を行って今後の調査を行う際には辞退率の減少を試みたい。 得られた結果からは、生後1年以内の母親の心理的ストレスが見られることが明らかになっている。そのため、今後この時期の丁寧な心理学的支援を構築することが課題となるだろう。また、研究の中で、出生前診断を受けることによって児の出産前に我が子の口唇裂口蓋裂であることが判明するケースが複数見られた。このため、今後は出生前診断が母親・家族に与える心理学的影響、さらにはそれが出産後の母子関係に与える影響についても検討を行う必要があるように思われた。 実践上の成果としては、一連の研究の結果として、東北大学病院唇裂口蓋裂センター内で形成外科・歯科・看護等の各専門領域との連携が図られることとなり、新年度には形成外科内に唇裂心理外来が設置され、診療の一環として出産後まもなくから口唇裂口蓋裂乳児とその母親・家族に対する心理的支援を実施する方向ができあがりつつある。
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