古典的傾斜理論はベルンシュタイン・ゲルファント・ポノマレフによって構成されたリフレクション操作に始まる。リフレクション操作はアウスランダー・プラツェック・ライテンおよびブレンナー・バトラーによって多元環上の加群圏の函手として実現された。しかしながら、準フロベニウス多元環上で古典的なリフレクション函手を構成すると、それは自明なものとなってしまい意味を持たない。本研究では、ブレンナー・バトラーによるリフレクション函手の研究を振り返り、その構成法に修正を加えることで準フロベニウス多元環上の導来加群圏にリフレクション函手を構成することに成功した。この新しい函手は2項傾斜鎖複体によって実現される。 古典的傾斜理論においてリフレクション函手は最も単純な傾斜操作として捉えることができる。その簡明さは具体的な多元環の解析に多くの利点をもたらした。同様に、本研究で構成したリフレクション函手は準フロベニウス多元環に最も単純な傾斜操作を与えていると考えることができる。実際、リフレクション函手によるブラウアツリーの傾斜操作を完全に決定することができた。さらにその傾斜操作によってブラウアツリーの導来同値類が全て得られることを示した。 本研究で構成した2項傾斜鎖複体を観察すると、中山函手の下で不変な単純加群を核に持つような準同型写像が現れる。これは特定の準同型写像を与えることで2項傾斜鎖複体が構成可能ということであり、傾斜鎖複体の構成に新たな視点を与えている。
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