圏論を主な手法とし、代数的な問題を扱うホモロジカルな枠組みの構築を目指している。今年度は特に、(I) 三角圏上のねじれ対からのアーベル圏の構成 および(II) 有限群上のMackey及び丹原関手 についての研究を進めた。 (I)は三角圏上の「ねじれ対のペア」からのアーベル圏の構成法を与えるものである。本研究では以前の結果で得た構成法を一般化し、さらにBuanとMarshにより提示されたrigid対象からの構成を同時に扱うことを可能としている。この一連の結果は、80年代にBeilinson-Bernstein-Deligneにより見出されて以降 代数幾何学・環論などで基本的かつ重要な役割を担っている「t-構造のハート」と、近年の三角圏を用いた代数の表現論においてBuan-Marsh-Reineke-Reiten-Todorovにより導入されたクラスター圏の文脈で得られた「クラスター部分圏による剰余」を同時に一般化する構成を、一般の三角圏で可能にしたものである。 (II)では有限群G上の丹原関手に対し、可換環のG-両変版としての理論構築を目指している。可換環論に不可欠な「イデアル剰余」を丹原関手でも定式化したが、今年度はさらに丹原関手の素スペクトラムの位相構造を調べ、Gが巡回p-群の場合にBurnside丹原関手のSpecの構造を完全に決定した。Dressにより決定されたBurnside環のSpecの構造と関係づけられることも示している。
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