研究概要 |
近年、Allcock, Carlson, Toledoにより3次曲面のモジュライ空間が4次元複素超球の算術商により与えられる事が示され、3次曲面のモジュライが集中的に研究された。FreitagとAllcockはBorcherdsの無限積を利用して3次曲面に付随する複素超球上の保型関数を構成し、寺杣と松本は複素超球をSiegel上半空間に埋め込み、テータ級数を用いて保形関数を構成した。一方、van GeemenとDardanelliは3次曲面のHessianを調べる事により、3次曲面のモジュライを考察している。彼等の結果を発展させ、IV型領域を利用して、3次曲面のモジュライに付随した保型関数を構成する試みは未だ成されておらず、これを本研究にて遂行しようと考えている。22年度は、Sylvesterの標準形で表せないHessian K3曲面の3次元族を調べた。この族はtoric超曲面としても得られ、Dolgachevの意味で、射影直線の3つの直積(P^1)^3の(2,2,2)次超曲面のMirror族となっている。周期積分がLauricellaのF_Cを満たすことを示し、テータ関数を利用して周期写像の逆写像を構成した。周期領域はSiegel上半空間であり、対応するmodular群はFricke対合による\Gamma_0(2)の拡大となっている。\Gamma_0(2)に関する保型形式の次数付環は伊吹山によって決定されており、生成元もテータ級数を用いて具体的に与えられているので、Fricke対合の作用に対する不変式環として構成できた。得られた結果は論文「Hessian K3 surfaces of non-Sylvester type」にまとめ、雑誌Journal of Algebraに掲載された。この結果は一般の3次曲面のHessianを調べる上での足掛かりになると思われる。
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