研究概要 |
pを素数とし,位数pの巡回群Z/pが,標数pの体k上のp変数多項式環に正則に作用しているとする.Z/pの生成元をσとおき,D_σ:=σ-idとおく.このとき,Im D_σ∩Ker D_σはKer D_σのイデアルになる.このイデアルをσの台座イデアルと呼ぶことにする. 平成22年度の研究成果で,素数位数の巡回群が多項式環に作用しているとき,あたえられた多項式がその素数位数巡回群作用で積分可能であるかどうかについて判定するアルゴリズムが構成されている.そこで,このアルゴリズムを走らせて局所スライスのデータを収集することが平成23年度の当初の研究計画であった.この計画と関連して,平成23年度,以下の研究成果が得られた. (1)p=3で,kが標数pの体で,σが3変数多項式環k[x_1,x_2,x_3]における自己同型でσ(x_1)=x_1,σ(x_2)=x_2+x_1,σ(x_3)=x_3+x_2を満たしているものとする.このとき,σの台座イデアルを計算した.この計算により,σの台座イデアルが定める多様体はアフィン直線であることが分かった. (2)素数位数のモジュラー巡回群が有限生成整域に正則に作用している(線形に作用しているとは限らない)とき,不変式環の生成系を計算するアルゴリズムを構成した. (3)(2)で述べられているアルゴリズムを用いて,標数3の体上の3変数多項式環における特殊な位数3の自己同型に対して,不変式環の生成系を計算した.従来の研究は,素数位数の巡回群作用が線形であることを仮定して,不変式環の生成系を計算している.従来の研究と異なり,本研究では,線形でない素数位数の巡回群作用の場合で,不変式環の生成系を計算している. 上記の研究成果のうち,(2)については,多項式環論セミナーやグレブナー若手集会などで講演した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,第一に,モジュラーな素数位数の巡回群による不変式環の生成系を計算する新しいアルゴリズムを,局所レイノルズ作用素を定義することによって作成すること,そして,第二に,そのアルゴリズムをもとに素数位数の巡回群による不変式環の生成系についてのデータを収集・整理・分析することにある.平成23年度の研究成果は第一,第二の目的のいずれについても,おおむね達成している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究はおおむね順調に進展しているので,研究計画を変更することなく,計画通り推進する.平成22年度,23年度の本研究課題の研究成果で得られたアルゴリズムを用いて,モジュラーな素数位数の巡回群による不変式環の生成系についてのデータをさらに収集・整理・分析する.
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