研究概要 |
体k上の代数における自己同型σに対し,Im(σ-id) ∩ Ker(σ-id) は Ker(σ-id)のイデアルになる.このイデアルをσの台座イデアルと呼ぶことにする.平成24年度の研究計画は,位数3の有限巡回群が,標数3の体上の3変数多項式環に非線形に作用しているときに,不変式環の生成系や台座イデアルの生成系を計算し,台座イデアルの生成元のなかに,不変式環の生成系の効率的な計算につながるものが存在するしないについての研究をすることと,また,そのような不変式環が完全交差になるかどうかについて研究すること等であった.この研究計画に沿って,以下の研究実績1,2,3が得られた.1 kを標数3の体とし,σをk上の3変数多項式環における位数3の自己同型で三角化可能なものとする.このとき,σの標準形を求めた.2 標数3の体上の3変数多項式環における位数3の三角化可能自己同型σがある特殊な条件を満たすとき,σによる不変式環の生成系を計算し,その不変式環がhypersurface ringになることを示した.3 kを標数3の体で,σを3変数多項式環k[x,y,z]における自己同型でσ(x)=x, σ(y)=y+x, σ(z)=z+yを満たしているものとする.Gをσによって生成される位数3の有限巡回群とする.このとき,多項式環k[x,y,z]に係数を持つ有限巡回群Gのコホモロジーの生成系を,σの台座イデアルの生成系を用いて求めた.上記の研究実績のうち,3については,多項式環論セミナーやグレブナー若手集会などにおいて講演した.
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