曲面の写像類群に付随するJohnson準同型の表現論的理解についての研究を進めた。 本年度は、佐藤隆夫氏との共同研究で得られた表現論的アプローチに基づいて、その組み合わせ論的な理解と河澄響矢-久野雄介氏によるトポロジー的アプローチとの比較を行った。前者については、榎本彦衛氏と共同で数値計算などを含めた定量的データを収集し、フック形と呼ばれる特別なヤング図形に対応する既約成分の重複度を明示的に与える公式を導出した。これは論文にまとめて投稿し、Journal of Lie Thoryに採録が決定した。また、さらに他の具体的な既約成分の重複度についても結果と予想を得て、現在論文執筆中である。後者については、佐藤・久野両氏と共同で研究を進め、榎本-佐藤で導入したanti-森田障害が河澄-久野によるアプローチの先導項には含まれていないことを示し、現在論文執筆中である。 なお、本年度は、榎本-佐藤による論文"New series in the Johnson cokernels of the mapping class groups of surfaces"がHournal of Algebraic and Geometric Topologyに採録が決定され出版された。 また、6月に東京大学で行われた国際研究集会「Workshop: Johnson homomorphisms」と11月に数理解析研究所で行われた国際研究集会「Hyperplane Arrangements and Characteristic classes」において講演を行い、これまでに得られた成果を公表するとともに、国内外の研究者と情報交換を行った。
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