数え上げ組合せ論における重要な研究課題の一つに、多様体の三角形分割や単体的セル分割のf-列の研究がある。本研究では、スタンレー・ライスナー環と呼ばれる可換代数の手法を用いて、代数的なアプローチから多様体の単体分割のf-列に関する研究を行う。今年度は、Novik-Swartzによって導入されたh"-列の理論を用いて、多様体の単体的セル分割のf-列についての研究を行い、球面の直積の場合にそのf-列の満たすべき必要十分条件を発見した。 2009年にIsabella NovikとEdward Swartzらによって導入されたh"-列の理論は、多様体の単体分割のf-列の研究において現在最も有効であると考えられている理論である。この理論は、多様体の単体分割のf-列の情報をある0次元の可換環のヒルベルト関数と呼ばれる代数的な情報に置き換えることができるという理論である。この置き換えを行うことで、多様体のf-列を調べる際に、対応する0次元の環の性質を調べる、という代数的なアプローチから研究を行うことが可能となる。Novik-Swartzの理論は多様体の単体分割のf-列についての非常に強い必要条件を与えることが知られており、「Novik-Swartzの理論による必要条件がどの程度必要十分条件に近いか?」という問題を調べることが現在の多様体の単体分割のf-列の研究における重要な課題の一つである。本年度は、このNovik-Swartzの理論について、球面の直積の単体的セル分割の場合に詳細な研究を行い、「球面の直積の単体的セル分割の場合には、Novik-Swartzの理論から導かれるf-列についての条件が必要十分条件である」という研究結果を得た。この研究結果については、現在、研究論文として取りまとめ、学術雑誌に投稿中である。
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