研究概要 |
次元ベクトルを固定しA型のクイバーの表現全体を考えると同型類は有限個になるので,それに対応して有限個の軌道を持つ概均質ベクトル空間が現れる.このような概均質ベクトル空間の相対不変式については,表現論や幾何学的不変式論の立場から古くから研究されてきた.今回,これらの空間に付随する多変数のb-関数を決定するアルゴリズムを発見した.計算結果はグラフを用いて極めて簡便に記述され,これは研究当初に予想していた以上の成果であった.A型のクイバーに付随する概均質ベクトル空間は,特殊線形リー環の任意の放物型部分代数から現れる放物型概均質ベクトル空間およびその部分双対からなる非常に広いクラスであり,本結果によって,可約な放物型概均質ベクトル空間のb-関数についてはかなり進展したといえる.この結果をまとめた論文はすでに受理され,発表される予定である.さらに,この研究結果を用いて,特殊線形リー環から現れる放物型概均質ベクトル空間の関数等式を計算する新しい方法を考案した.基本となるアイディアは,新谷卓郎氏によるものであるが,b-関数の計算ができたため,新谷氏の方法を一般化することができた.この新しい方法を用いれば、指数関数や三角関数を含む連立一次方程式を解くだけで関数等式が計算でき、一般的な結果を得ることが期待できる.この研究については、2010年10月に東北大学で開かれた概均質ベクトル空間に関する研究集会などで発表した.
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