研究課題/領域番号 |
22740023
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田中 孝明 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (60306850)
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キーワード | Mahler関数 / 代数的独立性 / 無限積 / 整関数 |
研究概要 |
整関数であって零点を除いた相異なる代数的数における値及びそれら代数的数における逐次微分をすべて併せた無限集合が代数的独立となるものの構成は重要な問題である。そのような整関数の冪級数表示の実例が種々の先行研究において得られている。しかし、いずれの先行研究においてもこのような性質をもつ整関数の零点の情報は得られていない。従って、このような著しい性質をもつ整関数であって明示的な無限積表示をもつものを構成することが重要である。この目的を達成するため平成22年度に引き続き、無限積表示される整関数であって、零点の集合が2項回帰整数列{R(n)}_<n≧1>の等比数列に対応する部分列{R(d^n)}_<n≧1>を成す場合について、そのような整関数の特殊値の代数的独立性の必要十分条件を記述する研究を遂行した。平成22年度は{R(n)}_<n≧1>としてフィボナッチ数列およびルカ数列をとる場合を研究したが、平成23年度はそれらの数列に限らない、より一般の2項回帰整数列し{R(n)}_<n≧1>をとる場合を研究対象とした。研究手法としては、{R(d^n)}_<n≧1>を零点としてもつ無限積により表示される整関数の、代数的数における値をMahler関数の特殊値に帰着させることにより研究を進めた。その結果、1変数のMahler関数に帰着される場合と2変数のそれに帰着される場合があり、後者の場合は例外のない強い結果が得られることが分かった。一方、1変数の場合は多くの例外が現われ、それらの定式化は容易ではない。従って、1変数に帰着される場合の中で定式化し得たものと2変数に帰着される場合とを併せた結果を論文としてまとめ、現在学術誌に投稿中である。 また、多変数Mahler関数は変数の乗法的変換の下に関数方程式をみたすが、乗法的変換を表現する行列に関する制約は強い。平成23年度の研究において、この制約を部分的に緩和することに成功し、この成果をディオファンタス解析研究集会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度の本研究の開始当初に比して、研究目的を達成するために用いる関数の型は変遷したが、研究目的自体には何ら変更はない。状況に応じてより適切な関数を選択することができているため、研究の進展度合いはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
零点を除いた相異なる代数的数における値及びそれら代数的数における逐次微分をすべて併せた無限集合が代数的独立となるという著しい性質をもつ整関数の構成には、q超幾何級数のアナロジーの中でも特に、無限積表示される整関数であって、零点の集合が2項回帰整数列の等比数列に対応する部分列を成すものを考えればよいことが分かった。従って、そのような無限積を表現できるMahler関数の振る舞いについて深く追究することで研究目的の達成を目指す。
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