研究課題/領域番号 |
22740024
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
松野 一夫 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (40332936)
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キーワード | 代数学 / 整数論 / 楕円曲線 |
研究概要 |
一般の代数体上で定義された楕円曲線に付随するTate-Shafarevich群の計算法開発を軸に、 Tate-Shafarevich群の性質についてのさまざまな考察を行っているが、本年度は初年度に引き続き、楕円曲線の2進岩澤不変量の具体的な計算および2進岩澤主予想の検証を中心に行った。楕円曲線の2進岩澤μ不変量とある代数体の一部分岐岩澤加群のμ不変量の間の関係については既に結果を得ているが、それを用いて、楕円曲線の岩澤μ不変量に関する予想の検証を以前より行っている。本年度は円単数を利用する計算プログラムに大きな改良を施し、初年度に購入した計算機を利用することにより、昨年度までは計算できなかった体についてもμ不変量を求めることができるようになり、初年度より広範囲の楕円曲線について、μ不変量や岩澤主予想の検証を行うことができた。 また、実装に使うことを計画している計算システムMAGMAの不具合の影響もあって、初年度はあまり進めることができなかった3-descentなどによるSelmer群の計算プログラムの開発も、本年度は徐々に進めている。MAGMAは不具合が改善されては別の不具合が見つかるという状況で、スムーズな開発は出来ていないのであるが、開発者にも逐一報告し、改善をお願いしながら、試行を繰り返している段階である。Fisher氏による5-descentを用いたSelmer群の計算法などの最新の結果も取り入れながら、次年度以降、更に開発の速度を上げられるような準備を整えている。その一環として、SAGE等、MAGMA以外の計算システムの利用の可能性についても、専門家とコンタクトを取るなどして調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
楕円曲線の2進岩澤不変量の計算や2進岩澤主予想の検証については、当初の計画より若干良い成果が得られていると考えるが、3-descentによる計算プログラムの開発はやや遅れている。トータルとしては概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
楕円曲線の2進岩澤不変量の計算等については引き続きプログラムの改良と計算の実行、および理論的な考察を進めて行く。Selmer群の計算プログラムの開発は、MAGMAの開発者との連絡を密に取りながら進める一方で、SAGEなど別の計算ソフトの専門家との交流も深めることで、より効率的な開発を進められる環境の構築に努めていく。その他の研究内容についても理論的な側面からの情報収集を開始する予定である。
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