研究概要 |
ネーター局所環(A,m)内のm-準素イデアルのヒルベルト函数の挙動には,イデアル自身のみならずそれを含む環Aの構造も強く反映していると考えられる。本研究の目的は,ヒルベルト函数の挙動を用いて,m-準素イデアル及び,それらを含むネーター局所環の構造の分類を行うものである。 非コーエンマコ-レイ環内に於ける,m-準素イデアルの第1ヒルベルト係数に関してJ.EliasとG.Vallaによって与えられた等式を用いてイデアルの随伴次数環のブックスバウム性の特徴付けを行った。これは,研究実施計画にて挙げた課題「非-コーエンマコーレイ局所環内に於けるイデアルのヒルベルト函数論の構築」,「随伴次数環,Rees代数,Sally加群の構造の分類」に関連するものであり,平成22年度に研究代表者が与えた部分的な解答に対して完全な解答を与えるものである。その中で,非コーエンマコーレイ環内に於けるSally加群に関する新たな技術を適応することで証明を与えることに成功している。これらの結果と前年度までの研究結果と併せて2編の学術論文として発表し,国内学会・研究集会では「日本数学会秋季分科会」や「第33回可換環論シンポジウム」,海外国際会議では「The 7^<th> Japan-Vietnam Joint Seminar on Commutative Algebra」にてその内容を報告している。 研究実施計画にて掲げた「第1ヒルベルト係数が比較的小さいm-準素イデアルの挙動解析」に関連して,正規化されたヒルベルト函数の挙動研究についても行った。正規化されたヒルベルト係数には基礎環Aの正則性やゴレンスタイン性が含まれていると考えられる。研究期間中は特に,1次元の被約なネーター局所環内に於いて正規化された第1ヒルベルト係数の値が小さいm-準素イデアルを持つような局所環の構造解明に着手した。この結果については,第17回代数学若手研究会にて口頭発表を行っている。
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