今年度は、局所環上の巴系加群のブックスバウム・リム重複度とcolengthの間の関係解明を目的に、次数付き環拡大に付随する不変量と関数について研究を行った。具体的課題とその成果は次の通りである。 1.標準的な次数付けとは限らない多重次数付き環拡大の斉次成分の随伴素イデアルの漸近挙動に関する研究を行った。標準的次数付き環拡大の場合の結果を自然に拡張する形で、斉次成分の随伴素イデアルの集合が(ある錐内において)漸近的周期性を持つことを証明した。この結果は、これまでの随伴素イデアルの漸近挙動に関する結果を含む一般的なものである。この応用として、昨年度の研究で得られていた斉次成分のgradeに関する漸近的周期性がより一般的な状況で成り立つことがわかった。この結果は論文として纏め、投稿済みである6 2.標準的な次数付き環拡大から構成されるある多重次数付き環とそのヒルベルト関数の研究を行った。この関数は、Kleiman Thorup、Kirby-Reesによって導入された関数で、加群のブックスバウム・リム関数の一般化であり、ブックスバウム・リム重複度とも密接な関係がある。局所環上の巴系加群に付随する次数付き環拡大の場合に、この一般化されたブックスバウム・リム関数について詳しく調べ、(通常の)ブックスバウム・リム関数に関する我々の結果(Hyry氏との共同研究)が、より一般的な状況で成り立つのではないかとの予想を得るに至った。1次元正則局所環上の典型的な巴系加群の場合に、一般化されたブックスバウム・リム関数の計算を行い、予想が正しい具体例を与えた。
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