研究概要 |
(1)正則ホモトピーによる球面の裏返しの新しい視覚化を開発した.(山本稔氏との共同研究)球面の裏返しは,1958にS.Smaleがその可能性を証明して以来,W.Thurstonによる再証明や,様々な研究者による具体的なプロセスが示されているが,今回は変形途中の球面の輪郭線に注目し,新しいプロセスを開発した.輪郭線を追うことだけで,球面が裏返せることは証明される,視覚化としても輪郭線の変形という観点からはこれまでで最も単純明快な方法になっていると思われる. また,輪郭線だけでなく,曲面全体についても描画した.これにより,自己交差の特異点の引き戻しも考察できるようになった.この一連の変形の視覚化は,コンピュータグラフィックスなどを用いなくても,実際に手で描いてみせることができる. こうして習得した技法は,今後絡み目補空間のファイブレーションや,二次元結び目のダイアグラムの視覚化などに応用が効くと期待される. (2)2008年に小林毅氏らと,絡み目のフラットプラミングバスケット表示というものを開発した.これは,絡み目のザイフェルト曲面を自明なオープンブックに埋め込むことで,ザイフェルト曲面をある意味で標準的な位置におく物である.また,絡み目を数列によってコード化することができる. 今回,二つの絡み目がパスムーブと呼ばれる変形の有限回の繰り返しで移り合う場合には,それらの変形の繰り返しを追跡できるようなバスケット表示が構成できた.これは,台となる円盤上のダイアグラムは固定し,そこに与えられたラベルの入れ替えだけで,パスムーブをフォローすることを可能にする.
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