研究概要 |
結び目及び絡み目のアレキサンダー多項式の零点の配置に関して成果をあげた近年,結び目の形が,アレキサンダー多項式の係数のみならず,零点の配置についてもうまく反映することが知られてきている. 特に零点が全て複素平面内の単位円周上にあるもの(chircular stableと呼ぶ)及び,全て実軸上にあるもの(real stableと呼ぶ)が興味深い. この研究は・ザイフェルト曲面などを用いた幾何学的な考察と,行列理論を用いた議論がうまくかみ合うため,村杉邦男氏と共同研究を行っている. 結び目の張るザイフェルト曲面から抽出した行列を調べ,曲面のひねる変形と,それに連動する零点の配置の変化を調べ,任意の結び目について,ザイフェルト曲面を十分に変形すると,零点がすべて単位円周上に運ばれることを 証明した. またこのようにして作られたcricular stableな結び目について,曲面を更にひねってもcircularstableなままとなる. 絡み目についても零点の安定性について調べ,モンテシノス絡み目について,それ自身はcirular stableであるが一方の向きを逆転するとreal stableになるものをザイフェルト曲面を通じて構成した.零点の安定性は多変数のアレキサンダー多項式についても定義されるが,これらについては一変数に比べ格段に複雑になる. 絡み目のアレキサンダー多項式の零点について,それらをメビウス変換によって変換したものを零点にもつ多項式は,またある絡み目のアレキサンダー多項式になることがある.よいメビウス変換を見つけてchirular stableなものをreal stableなものに変える変換になっていることを保証した.
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