研究課題/領域番号 |
22740039
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 進 神戸大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90345009)
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キーワード | 仮想結び目 / ねじれ数 / 局所変形 / 結び目群 |
研究概要 |
仮想結び目の不変量と結び目の時間的変化の観点から以下の三点に関する結果を得た。 (1)結び目のねじれ数は結び目理論において重要な指標のひとつである。カウフマンにより仮想結び目に対して奇ねじれ数が導入され、その後さまざまな研究者により拡張された。これに関し、私は本年度谷口氏との協同研究においてnねじれ数とよばれる不変量を導入した。nねじれ数はそれまでの拡張をすべて含む不変量であり、すでに知られている結果に簡明な別証明を与えるだけでなく、仮想結び目に関する新しい結果をいくつも与えることができた。 (2)結び目の不変量として結び目群があるが、仮想結び目に対して上表示群と下表示群は一般に同型ではない。どのような群の対がひとつの仮想結び目の上下表示群として実現されるかは分かっていなかった。本年度の中村・中西・冨山氏との協同研究でこの問題に取り組み、任意の2橋結び目群の対は必ず実現されることを示した。この問題に関する初めての成果であり今後の研究に繋がるものである。 (3)結び目の時間的変化におけるもっとも単純なモテルは交差交換の列である。このような列を区別する方法として、コボルディズムによる分類を定義し、Baarderによって構成されたゴルディアン距離2の結び目対をつなぐ無限通りの列が、実は4次元空間の観点から見ると本質的にすべて同じであることを示した。同様に内田氏によって構成されたゴルディアン距離1の結び目対をつなぐ遠回り列もすべて同じであることを示した。このことは、結び目の時間的変化を分類する上で4次元的に見ても異なる列を構成することの重要性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ねじれ数に関しては、当初予想していた奇ねじれ数の特徴付けが完全に解決できた。またnねじれ数を発見できたので、当初の計画以上に進展した部分も多い。上下表示結び目群に対する研究は現時点で2橋結び目群対に関する部分的解決である。交差交換列の分類については、ほぼ予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)nねじれ数に対応する局所変形を決定する。奇ねじれ数のときに導入した局所変形だけでは不十分なので、具体例を通して何が必要なのかを探りたい。 (2)上下表示群対としてどのような群があらわれるか調べる。2橋結び目群対のときの手法がそのままでは適用できないので、橋指数以外の指標などから考え直したい。 (3)交差交換以外の局所変形を用いて、結び目の時間的変化を分類する。コボルディズムの観点から局所変形がどのような曲面に対応するかを調べる必要がある。
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