研究概要 |
本年度は結び目および曲面結び目の不変量という観点から、大きく分けて以下の二点に関する結果を得た。 (1)pを奇素数とし, p彩色可能な結び目および曲面結び目Kに対して, 非自明なp彩色に現れる色の種類の最小値をC_p(K)とかく. p=3,5,7,11に対してはそれぞれC_3(K)≧3, C_5(K)≧4, C_7(K)≧4, C_{11}(K)≧5であることが知られている. 今回神戸大学の中西氏と大阪電気通信大の中村氏との共同研究により, すべてのpに対してC_p(K)≧[log_2 p]+2が成り立つことを示した. さらに仮想結び目のカテゴリーまで拡張すれば, 評価は最良であることも示した. すなわち各pに対してC_p(K)=[log_2 p]+2をみたす仮想結び目Kが存在する. この研究は一般のp彩色に必要な色の種類の下限を与えただけでなく, p彩色可能性によって交点数が評価できるということを明らかにした点でも興味深い. (2)自己交差をもつ曲線Cに対して, 各交点を平滑化して得られる曲線をステイトといい, 特にi個の円周からなるときi-ステイトという. Cから得られるi-ステイトの個数をi-ステイト数といい, s_i(C)とかく. また結び目Kに対して, Kのすべての射影図にわたるs_i(C)の最小値をs_i(K)とかく. 中西氏・中村氏と神戸大学の冨山氏との共同研究において, s_i(C)およびs_i(K)の性質を明らかにした. 特にs_1(C), s_2(C), s_3(C)の値を交点の個数で評価した. また結び目Kがs_3(K)=0をみたすならば, 宮澤多項式が非自明, n-ねじれ数が非自明, 上方群と下方群が非同形, のいずれかをみたすことが分かった. このことは, すべての古典的結び目Kに対してs_3(K)>0が成り立つことを意味している点で興味深い.
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