3次元多様体上の(1)種数0のバーコフ切断を許容するアノソフ流と、(2)アノソフ写像の懸垂流としては表わせないが流に横断的なトーラスを許容するアノソフ流の例について調べた。 特に、Bonatti-Langevinによるアノソフ流の例は(2)の性質をみたす例として提示されていたものであるが、なおかつ(1)の性質も持つことが釜谷・児玉との過去の共同研究で知られていた。この例に対しては、既に相異なる2つの種数0のバーコフ切断を構成しており、両者の定める擬アノソフ写像の関係についても調べていた。この度はさらにこれらの一方にある操作を施すことによって新たに種数1のバーコフ切断を構成することに成功した。この操作は、周期軌道を境界として持つ2穴あき円板を既にあるバーコフ切断に貼り合わせることにより新たなバーコフ切断を生み出すもので、構成法から種数は不変であるかあるいは増加する。種数を制御する一般論を導き出すにはまだ至っていないが、推移的なアノソフ流には周期軌道が稠密に存在することからこの操作を適用することにより多様なバーコフ切断の変形が期待され、また実際に数式で明示的に与えられた他のアノソフ流の具体例に対してもバーコフ切断の取り換えを観察できている。 また、(2)の性質のみを持つアノソフ流の例の構成も試みた。まず、測地流の有限個の閉軌道についてデーン手術を行って得られる一連の例がある。他にFranks-Williamsによる非推移的アノソフ流の構成法を応用して、流に横断的なトーラスを許容しつつ推移的であるような例についても考察した。
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