本年度は3年間にわたる研究期間のスタートとなる年であり、研究実施計画に従い以下の研究をおこなった。 1.球面の安定ホモトピー群の中の周期的な元(デルタ元)の自明性・非自明性に関する考察 2.small descentスペクトル系列を用いて得られた結果を基にしたスペクトラムT(m)の安定ホモトピー群に関する研究 特に研究課題1.については、申請者がクロマティックスペクトル系列のE1項の加群構造の情報を用いて既に得ていた結果をさらに精密化することによりデルタ元が自明になるための十分条件に関する成果を得た。また、高知大学の加藤諒氏の研究協力から得られた別のクロマティックE1項の情報を用いることにより、いくつかのデルタ元の非自明性に関する結果を得た。これらの成果は2010年の日本数学会秋期会において加藤諒氏と共同で研究発表をおこなった。 研究課題2.のスペクトラムT(m)のホモトピー群の構造決定に関しては、古典的なJ準同型の像のアナロジーに関する部分は完全に決定出来ているので、coker Jの部分に関する効率の良い計算方法を求めることが重要な課題となる。これに関しても現在coker Jの部分に収束するカルタン・アイレンベルグ型の新しいスペクトル系列を導入することで継続して研究を進行中である。 また、研究課題に関連する各種のシンポジウムに参加して、ホモトピー論などに関する学術的意見交換や若手を中心とするホモトピー論関係者との研究交流をおこなうために国内出張費を充てた。
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