1.ファイバー曲面の村杉和分解 ファイバー曲面上のarc complexから得られるオープンブック分解の複雑度と、オープンブック分解の既知の不変量であるAlexander多項式との関連を探った結果、ファイバー曲面上のarcたちの代数的交差数との密接な関連の様子を明らかにできた。つまり、ファイバー曲面上のsymplectic arc systemと呼ばれる基本的なarcたちと、オープンブック分解のmonodromy写像によるarcたちの像との間の代数的交差数をAlexander多項式の各係数から計算する方法を開発できた。 先に述べた複雑度をより厳しく評価するためには、arcたちの幾何的交差数の情報を取り出す必要があり、そのためには、Alexander多項式よりも強い不変量が必要であるが、上で述べた成果から、Alexander多項式を拡張して目的の不変量へと進化させる方向性が見えてくるものと期待している。 2.Stallings twistという操作、オープンブック分解と接触構造 与えられたオープンブック分解が、overtwistedと呼ばれる接触構造をサポートするか否かを判定する、新しくより強い方法を構築することを目指して、Stallings twistを許容しないオープンブック分解であるが、overtwisted接触構造をサポートするものの具体例をいくつか構成した。(オープンブック分解がStallings twistを許容するならovertwisted接触構造をサポートすることは、先の研究で既に示している。)これらのオープンブック分解に共通する特徴を見出すことで、Stallings twistを持たずにovertwisted接触構造をサポートするメカニズムを捕らえることが出来ると期待している。さらに、その特徴を持つか否かにより値の変化する不変量の構築を目指す足がかりともなると考える。
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