研究概要 |
繰り返し遷移が必要なモンテカルロ法に対し、ω退化性の概念を導入し、(b)複数の手法の比較や(c)新しい手法の提案を行った。昨年度までに一致性の概念や弱一致性の概念を考案し、様々なモデルに適用してきた。一致性=良いふるまい、弱一致性=それに劣るふるまい、に対応する。技術的に弱一致性を示すことはしばしば困難なため、本年では弱一致性を含めた広い概念、退化性を導入した(a)。退化性の必要十分条件を検討し、とくに正則なモデルではフィッシャー情報量によって退化性が記述され、多くの文献の(証明、定義なしの)主張を裏付けるものである。例としてc個の離散値をとるモデルにたいするモンテカルロ法を解析し、c=2のとき、一般に用いられている手法Data augmentation(DA)とMarginal augmentation(MA)手法を比較すると、前者は退化性、後者は一致性を持つため、後者がより優れていることを確認した。これは一般に信じられているものの理論的確認に過ぎない。一方、c>2のとき、どちらも退化していていることを示せたが、こちらは従来のアプローチなら示すことが極めて困難な事実である(b)。以上の(a,b)をまとめて投稿中である。またさらに進んで任意のcに対して一致性を持つモンテカルロ法を考案し、従来手法を劇的に改善することを数値実験でも示せた(c)。関連した理論的結果とともに(c)も投稿中である。 またパリ市のCentre d'Etude du Polynorphisme Humain研究所に一か月滞在し、次世代シーケンサーのデータを解析した。正常細胞と比較してがん細胞は染色体のきわめて長い区間で増幅や欠損させることを利用して、がん細胞と正常細胞の分離、またがん細胞の分類を行った。解析は正規混合モデルや隠れマルコフモデルなどITRMC法の主な適用分野である欠損データ解析にあたり、従来手法の組み合わせを用いた。 まだ論文とはなっていないが、現在も日本からデータを解析中である。
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