1.多項式最適化問題は産業数学で良く現れるにも関わらず、単に非線形最適化問題として扱われ特別な注目を受けずにいた。しかし、大域最適解を高速に求めるアルゴリズムがLasserreなどにより発見され、その応用の幅広さから近年盛んに研究されている。そのアルゴリズムは多項式最適化問題から半正定値計画問題の列を生成し、それらの解を内点法によって求めることで、元の問題の大域最適解を得るというものである。しかし、その際内点法が収束するためには、半正定値計画問題の最適値とその双対問題の最適値が一致する(強双対性)という条件が必要である。これに対し、実代数幾何の手法を応用し、強双対性が成り立つための十分条件が元の多項式最適化問題の制約式から生成されるイデアルに関する条件で書き表せることを発見した。結果は現在投稿準備中である。2.今までの研究で、変分解析をアルゴリズム設計に応用し、オンラインアルゴリズムの代表的な問題である通貨交換問題に対する効果的なアルゴリズムを考案することに成功している。これはある通貨を一定期間内に両替するとき、レートの変動が全く分からない状況下で、どのようなアルゴリズムで通貨を交換していけば良いか、という問題である。これをL1上の変分問題に変換し、不連続な最適解(アルゴリズム)を解析的に求めており、また、この結果を従来の結果と比較するためミニマックス問題を考え、戦略集合がコンパクトでない状況下で、鞍点として不連続関数と跳躍のある分布の組みを解析的に求めることに成功している。それらの研究成果をまとめ、変分解析における距離正則性のアルゴリズム設計への応用や距離正則性の理論面に関して、Rampシンポジウムにて講演した。
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