近年、最適化理論と実代数幾何に関する研究には劇的な変化が起こっている.Lasserre などにより発見された新しいアルゴリズムにより,大規模でなければ,多項式最適化問題の大域最適解を実用的な計算量で求めることができるようになった.驚くべきことに,そのアルゴリズムの挙動は,実代数幾何における高度に抽象的な議論によって得られる結果に依存している.そのことから,最適化理論の研究者は,研究において実代数幾何の概念を取り入れることが必要となり,また実代数幾何の研究者は,最適化問題からの要請により提起された新しい理論研究の課題に直面している.平成 25 年度の研究は,以下の通りである. 1. 多項式最適化問題の大域最適解を求めるアルゴリズムは,半正定値計画問題の列を生成する.多項式最適化問題の制約式から生成されるイデアルの実性が,半正定値計画問題の強双対性と関係があることを示し,それらの結果をまとめた論文が出版された. 2. すべての最適解において,2 次の最適性十分条件が成り立つとき,Lasserre のアルゴリズムで必要な半正定値計画問題は有限個である(多項式最適化問題の有限近似性).最適化理論における様々な最適性十分条件と多項式最適化問題の有限近似性について調べ、論文を執筆中である. 3. 制約式を生成元とするイデアルの実点が有限個であれば,多項式最適化問題は有限停止性を持つ.この有限停止性は,上記 2 の場合とは本質的にことなる構造から生まれる.本研究において,関数解析的な観点も取り入れ,研究を進めている段階である.
|