研究課題/領域番号 |
22740058
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村川 秀樹 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教 (40432116)
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キーワード | 非線形拡散問題 / 退化放物型問題 / 交差拡散系 / 反応拡散系近似 / 急速反応極限 / 数値解析 / 自由境界問題 / 3重結節点 |
研究概要 |
本研究では、応用を見据えた理論の構築を目的とし、反応拡散系近似理論の細部に踏み込んだ解析からその応用まで、多岐にわたった研究を行っている。本年度は当初計画通り、反応拡散系近似理論の数値解析への応用、及び、次年度の解析のための基礎研究を主に行った。 本研究初年度に、非線形交差拡散系に対して、一般的な問題に適用できる、汎用的で実装が容易な数値解法を提出していた。数値実験により、この数値解法による誤差を調べたところ、時間刻みに対する精度は1次、空間刻みに対しては2次精度であることが観測された。この収束次数は、既存の煩雑で計算コストの高い数値解法の次数と同じものであり、数値実験は提案した数値解法の有用性を示すものである。数値解法の汎用性、簡便性、有効性が確かめられたため、この数値解法の解析を行った。特に、空間離散をしていない時間離散スキームの収束性について解析的な結果を得た。更に、有限体積法の理論を用いて空間離散化を行い、その解析を行っている。 最終年度へ向けた基礎研究として、反応拡散系近似理論及び急速反応極限理論の細部に踏み込んだ研究を行った。D.Hilhorst氏(パリ南大学)を訪問し、沈殿・溶解を伴う液体・個体間の化学反応における急速反応極限について研究した。この問題は核廃棄物処理に関連する応用上重要な問題であると共に、急速反応極限についての理解を深める問題でもある。この問題に対して、その極限を具体的に表し、解がその極限に収束するこどを示した。また、P.Magal氏(ボルドー2大学)を訪問し、非局所的な分散を伴う非線形拡散について議論を行い、大変興味深い結果を得た。この研究は、本研究における重要な目的である非線形拡散のメカニズムの理解において大変有意義なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度、平成23年度の交付申請書及び研究実績の概要に記した通り、本研究は当初計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は申請時の計画通り、順調に進展しているため、計画通りに研究を推進していく。ただし、本研究内容は多岐にわたるものであり、様々な分野の研究者の協力なしに遂行できるものではない。D.Hilhorst氏(パリ南大学)、P.Magal氏(ボルドー2大学)、L,Desvillettes氏(ENS Cachan)、赤木剛朗氏(神戸大学)、二宮広和氏(明治大学)、飯田雅人氏(宮崎大学)、齊藤宣一氏(東京大学)等、急速反応極限の専門家や非線形拡散を精力的に研究している研究者、数値解析の専門家等に協力をお願いし、活発な議論を行うことで、研究を推進していく。
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