平成22年度においては主に、三角形要素上の補間誤差定数の精密評価について研究を行い、満足すべき結果を得ました。非凸領域において偏微分方程式を解くと、しばしば非凸な角で解の滑らかさが失われる現象が生じますが、この特異性に対処するため、非凸な角の周辺でメッシュを細かく切る、いわゆるメッシュリファインメントが用いられています。我々は既に、メッシュリファインメントを用いた場合の二次の非線形楕円型偏微分方程式の解の精度保証法を確立していますが、三角形要素上の補間誤差定数の見積もりがあまり良くなく、有限要素法で用いる三角形要素の形が悪いと極端に精度が落ちるのが問題でした。補間誤差定数の評価は、無限次元固有値問題における最大固有値の評価に帰着されますが、我々はこの問題を上手く離散化し、解くべき無限次元固有値問題の解を行列固有値問題の解を用いて評価することにより、効率の良い公式を作成し、かつ証明することに成功しました。一般的に、連続問題の解を離散問題の解で近似することはよく行われていますが、我々の成果は単なる近似ではなく、数学的に厳密な評価であるという点において画期的であると言えます。また、この結果は、非凸領域における楕円型方程式の解に対する精度保証だけでなく、均等メッシュを用いた通常の有限要素解の精度保証についても有用です。この成果については、平成22年度において、国際研究集会で2回、国内の研究集会で2回の発表を行いました。
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