研究概要 |
パラメータ付き問題を解くことは計算機代数において大きな問題の1つである。そこでパラメータ付き問題を解くために重要な鍵の1つとなるものが包括的グレブナー基底系[CGS](Comprehensive Grobner system)である。CGSを速く計算することは産業ならびに自然界の諸問題等の大きな問題を解くために重要なことである。簡単にいうとCGSとはパラメータ付きイデアルのグレブナー基底のことである。当該年度においては,まずCGS計算の新しいアルゴリズムを考案し,そのプログラムを試作ではあるが計算機代数システムRisa/Asirに実装した。このアルゴリズムの基礎となる部分はイデアルの安定性理論である。今までいくつかのイデアルの安定条件が提示されているが,どの安定条件よりも強い条件を発見し,この条件を使いCGS計算アルゴリズムを構成した。また,実装は試作の段階だが,多くの計算機実験で他のものより優れていることがわかった。このアルゴリズムからの派生としてパラメータ付きイデアルの次元の分類計算が容易にできることがわかった。このCGS計算の高速化により今後より多くの「パラメータ付き多項式の応用問題」を解くことが可能となると考える。 当該年度において,特異点を数式処理の立場からアプローチする研究もしている。特異点の性質を研究する際,広い意味で『計算』することが必要になる。現在は,数式処理の技術が発展しており数式処理の技術・理論を使って計算機に計算させることは,特異点研究をする際には効果的なことである。そこで,孤立特異点に付随した定義多項式のヤコビイデアルの標準基底・グレブナー基底計算アルゴリズムの構成・実装をした。これは,基底代数的局所コホモロジー類を計算し,そのコホモロジーの性質を利用したもので,特異点に特化した画期的な方法である。もちとん,定義多項式にパラメータを含む場合が現実的にあり,この場合に対応すべくアルゴリズムを構成している。まだまだ,アルゴリズムに改良の余地,研究対象物に拡張の余地があるが特異点研究の手助けとなる計算方法を構成した。
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