本研究では、時系列データの解析(数理的特徴に基づくデータの自動分類、異常の検出など)への応用を視野に、確率過程の分解(揺動散逸分解、正弦波分解、弱白色分解)について調べることを目的としている。研究内容は「数学の理論に関する分析」「時系列データに関するアルゴリズムの導出」「計算機プログラムの作成」という3つの部分から構成される。 平成22年度には、「数学の理論に関する分析」について、確率過程の分解をフレーム理論の観点から調べた。特に、フレーム理論におけるディレーション、コンプレッションという概念を、確率過程に適用した。具体的には、非定常な観測時系列データの数理モデルとして「非定常な観測時系列」=「定常確率過程の実現値」+「観測ノイズ」-「測定不能成分」という分解を考え、それに関する諸定理を導いた。今後、こうした理論的な結果を組み込んだ解析アルゴリズムを完成させることで、実データの解析において、観測ノイズの除去と、観測時に切り落とされてしまった成分の補完が、より適切に行えるようになると考えられる。 一方、「計算機プログラムの作成」に関しては、確率過程(あるいは時系列データ)を弱白色過程に分解する「弱白色分解」について、試行的なプログラムを作成し、動作確認をした。今後、本格的なプログラムを作成することで、実データへの適用を試みたい。
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