本研究では、時系列データが持つ数理的特徴を抽出し、それに基づいて、データの自動分類や異常の検出などを行う手法の開発を目指してきた。とりわけ、「揺動散逸分解」「正弦波分解」「弱白色分解」という3種類の確率過程の分解に着目し、「数学の理論に関する分析」「時系列データに関するアルゴリズムの導出」「計算機プログラムの作成」という3つの側面から研究を進めた。 このうち、「計算機プログラムの作成」に関しては、平成24年度までの研究で、上記3種類の分解に対して、各分解ごとに、それを実行するためのプログラムを別々に作成してきた。これを踏まえ、平成25年度における研究では、まず、これらのプログラムの統合化を図った。その上で、実際の時系列データ(とりわけ株価データなどの経済データ)を用いて、作成したプログラムの動作確認を行い、加えて利便性の向上を目指し、改良を施した。 一方、「数学の理論に関する分析」および「時系列データに関するアルゴリズムの導出」に関しては、平成24年度に、反定常性を満たす確率過程に対し、それまでには知られていなかった新たなタイプの「揺動散逸定理」を発見し、証明していた。揺動散逸定理とは、確率過程を揺動的な部分と散逸的な部分に分解した際、各成分間に成り立つ関係式のことであり、実際の時系列データの解析に重要な役割を果たす。これをもとに、平成25年度における研究では、反定常時系列に対する解析アルゴリズムを、具体的に導出した。この結果は、今後、実データの解析に役立つものと期待できる。
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